あの動脈とこの静脈
ー時と空間の旅ー
平成29年度東京藝術大学美術学部絵画科油画
学部2年生展覧会
はじめに
本展覧会は、2ヶ月間で企画・展示・広報までを学生のキュレーションチームで行い、出品者には「旅」をキーワードに制作をしてもらいました。
今回のテーマである「時と空間の旅」が決まった経緯は、自分が実際には行ったことのない場所や経験したことのない時代に対して、単なる趣味という以上のリアリティを感じたことがあると、話し合いの中でチームの何人かが発言したことがきっかけです。この感覚が一体何なのかを探す中で、2009年に発表された現代人のアイデンティティに関する仮説、ニコラ・ブリオーの『オルター・モダン』にたどり着き、これを展覧会の骨子とすることにしました。結果として、この展覧会自体がこの言説の中で説かれる新しい創造の形を模索する実験の場となったと思います。
タイトル「あの動脈とこの静脈」は、一人の人の中で循環が終わらず、他性の中へ自由に通じて行けるイメージを表しています。本展の順路は、このイメージを反映させた構成となっています。
最後になりましたが、本展の開催にあたり惜しみないご協力やご助言を頂きました関係者のみなさまに、心より御礼申し上げます。
2018年2月 キュレーターチーム一同

実際には体験していない時代の出来事や、行ったことの無い場所に、単なる自分の趣味という以上のリアリティを感じることはないだろうか。
旅や移住の増加、インターネットやコミュニケーションツールの発達により、世界には大量の情報やイメージがあふれ、私たちの生き方に影響を及ぼしている。生まれてから現在にいたるまでの軌跡は直線でたどることが困難になり、私たちのルーツは脈絡のない体験の集合体となってしまったのだろうか。
ここで、私たちは時間と空間を自由に移動する旅人として、もう一度出発しなければならない。
異なる歴史や地形を自由自在に放浪しながら、それぞれの多様な文化を採取し、異質なものどうしをつなぎ合わせることで、旅そのものを再構成していく。この新たなアーティスト像は、地球規模の混沌の時代を生きる1つのモデルとなる。さらに、バラバラな、しかし奥深いそれぞれのピースを編んでいくという自覚に立つとき、アーティストとキュレーションの仕事が近づいていることに気づく。
この展覧会は、普段一緒に制作をしている学生どうしが、アーティストとキュレーターに分かれて相互に影響しあうことで、この新たな創造のあり方を探る試みである。
展示者一覧
赤澤 玉奈
阿部 華帆
李 睿智
五十嵐 大地
井上 園子
内海 拓
江口 真紀子
大友 秀眞
大町 有香
岡田 裕梨
奥山 帆夏
金子みずき
河﨑 萌
河原 安珠
菊岡 穂
木下 宇宙咲
北上 貴和子
北原 睦美
木村 文香
クドリック 華子
古賀 満里奈
小林 淑華
佐藤 はなえ
里重 水
鈴木 萌恵子
角野 理彩
高野 実紅
橘 智香子
龍村 景一
永井 杏奈
永島 悠伊
中島 摩耶
名執 英剛
乗岡 祐美
長谷川 拓也
初瀬 優香
林 裕人
原口 久典
東 佐恵子
東 結子
蛭田 泰平
松森 士門
宮原 はな
三好 大和
森 ゆらら
山縣 瑠衣
山田 和樹
吉田 樹保
和久 千文
(50音順)